【高次脳機能障害】事故から約1年後の死亡。因果関係を立証し、賠償金約2,600万円を獲得した事例
1 ご相談のきっかけ・お悩み
ご依頼者様は、被害者の方(80代男性)の息子様で、交通事故により被害者の方が脳挫傷等を受傷したことから、その賠償交渉の代理のために当事務所への依頼をされたものです。なお、当該被害者の方は、受傷後約1年の治療の甲斐なく死亡するに至っております。
2 本件の課題と弁護士の方針
⑴ 成年後見申立て
まず、本件では当該被害者の方が脳挫傷等を受傷し、いわゆる高次脳機能障害を患っておられたため、判断能力が乏しい状態でした。そのため、法的な手続きを開始するためには、ご家族を正式な代理人(成年後見人)として選任する、家庭裁判所への申立てが不可欠でした。
⑵ 後遺障害等級認定申請での上位等級の獲得
次に、当該被害者の方の状態を踏まえ、高次脳機能障害に基づく後遺障害として適切な等級の獲得を目指す必要がありました。特に、本件では障害の程度が重く、今後の生活維持を図るために上位等級を獲得し、それに応じた賠償額の確保が必要でした。
⑶ 受傷後1年経過後の死亡と交通事故との因果関係
そして、最大の課題は、事故から約1年が経過した後の死亡について、法的に「交通事故が原因である」と保険会社に認めさせることでした。これが認められなければ、死亡に対する賠償金は一切支払われません。
3 当事務所の具体的なサポートと解決結果
まず、ご依頼者様のご意向をふまえ、成年後見人の候補者としてご依頼者様を挙げ、審判によりご依頼者様を成年後見人とすることができました。
次に、成年後見人であるご依頼者様よりご依頼を受け、自賠責保険に後遺障害等級申請を行いました。その際に、主治医の診断書以外に「神経系統の障害に関する医学的所見」・「頭部外傷後の意識障害についての所見」の取付けのほか、日常生活状況報告書の作成にあたっての助言等を行ったうえで、当職にて後遺障害等級に関する意見書を作成して、当該被害者の方の後遺障害の程度が重篤であり、上位等級に該当することを積極的に主張するなど、後遺障害等級認定申請の全面的なサポートを行いました。
さらに、当該被害者の方の死亡後には、被害者請求を改めて行い、自賠責調査事務所からの死亡との因果関係の照会に対しても、診断書・診療報酬明細書を踏まえて因果関係が認めさせるための適切な対応を行いました。その結果、死亡との因果関係が認められ、その後の賠償交渉でも、死亡事案であることを前提に賠償交渉を行い、過失が2割程度ありながらも2600万円の賠償金(自賠責保険金を含む)の獲得ができたものです。
サポート項目 |
【Before】ご依頼前 |
【After】弁護士によるサポート後 |
後見申立て |
後見人が不在のため、賠償交渉進まず |
後見人の選任の申立てにより、ご依頼者様を後見人に選任。 |
後遺障害等級申請 |
等級認定のサポートなし |
診断書以外に各種報告書の取付・作成助言等を行ったうえで、当職作成の意見書を提出して、上位等級の獲得へのサポートを行う。 |
死亡との因果関係の立証 |
立証のサポートなし |
診断書等を踏まえて死亡との因果関係の立証に対して適切に対応。 |
賠償交渉 |
賠償交渉のサポートなし |
損害額の適切な立証・交渉により、2割の過失割合がありながらも約2600万円の賠償金を獲得。 |
4 本件解決のポイントと弁護士からのコメント
本件は、当該被害者の被害の程度が大きく、後見申立てから賠償交渉まで一連で対応する必要がありました。また、受傷後一定期間経過後に死亡するに至る等特殊事情も重なりました。このような状況で、ご依頼者様ですべての一連の対応を行うことは、やはり心労的にも大きな負担であったものと思われます。
本件の最大のポイントは、成年後見申立てから、医学的知見を要する後遺障害申請、そして最終的な賠償交渉まで、複雑に絡み合う複数の法的手続きを、当事務所がワンストップで対応できる総合力にあります。特に、等級認定の申請・死亡との因果関係に関する立証は、後遺障害等級の認定ポイントを考慮した医学的な知見を踏まえた対応が必要であり、当方で主導しながら行った結果、死亡との因果関係を認めさせたうえでその後の賠償交渉までスムーズに進めることができ、結果的に相応の賠償金(自賠責保険金を含む)の獲得につながりました。
ご家族が重い交通事故に遭われ、その後の介護や手続きにご心労されている中で、保険会社と対等に交渉することは、精神的にも時間的にも計り知れないご負担となります。
交通事故の賠償問題は、事故直後から適切な対応を取ることで、最終的な結果が大きく変わることがあります。当事務所は、後遺障害の認定や死亡事案など、複雑な案件にも豊富な経験と実績がございます。お一人で悩まず、賠償問題の初期段階から、ぜひ当事務所にご相談ください。
(監修:弁護士 福ヶ迫 昌孝)